【見積もりの前に】耐震補強リフォーム費用が決まる”3つの要因”をプロが全解説

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テレビで地震のニュースが流れるたびに、心のどこかで「うちの家は大丈夫だろうか」という不安がよぎる。日本に住んでいる限り、誰もが避けられないこの感覚。耐震補-強の重要性は、頭では十分に理解しているはずです。


しかし、その必要性に反して、多くの人が具体的な行動に移すことをためらってしまいます。その最大の壁となっているのが、「費用」に関する問題ではないでしょうか。「一体いくらかかるのか、全く見当もつかない」「調べてみたら、予想をはるかに超える金額だったらどうしよう」「しつこく営業されたり、法外な値段を請求されたりするのではないか」。


このような、金額そのものへの不安と、業者に対する不信感。その”分からなさ”こそが、私たちの心を重くし、大切な一歩を踏み出すことを躊躇させている本当の理由なのです。この記事では、そんな漠然とした費用の不安を解消し、安心して我が家の安全と向き合うための正しい知識を、専門家の視点から丁寧にご説明します。




■耐震補強費用の”相場”は150万円?費用の決まり方と工事内容の内訳

耐震補強リフォームについて調べ始めると、まず気になるのが「費用の相場」でしょう。一般的に、木造戸建て住宅の場合、その費用は100万円から250万円程度が目安と言われています。


しかし、正直にお伝えすると、この金額はあくまでも”参考値”に過ぎません。あなたの家の耐震補-強に実際にいくらかかるかは、家の状態によって大きく変動します。なぜなら、耐震補強費用は、主に以下の3つの要素で構成されているからです。



・① 耐震診断費用(約20万~40万円)

まず、全ての始まりとなるのが「耐震診断」です。専門家が現地調査を行い、建物の-基礎や壁の配置、劣化状況などを詳細に調べ、耐震性を数値化します。この診断結果が、どのような補強がどれくらい必要かを判断する設計図の元になります。



・② 設計費用(約10万~30万円)

耐震診断の結果に基づき、具体的な補強計画を立てるための費用です。どこを、どのよ-うに補強すれば最も効果的かつ効率的か、専門的な知見をもとに設計図を作成します。



・③ 補強工事費用(約50万~200万円以上)

設計図に沿って、実際に工事を行うための費用です。工事の内容は多岐にわたりますが、代表的なものには以下のようなものがあります。


【壁の補強】:筋交いや構造用合板を設置して壁の強度を高める工事。

【基礎の補修・補強】:基礎のひび割れを補修したり、鉄筋コンクリートで基礎を一体化させる工事。

【接合部の補強】:柱と土台などを専用の金物で強固に連結する工事。

【屋根の軽量化】:重い瓦屋根を、軽い金属屋根などに葺き替える工事。


これらの工事の中から、あなたの家に必要なものを組み合わせて実施するため、費用に幅が生まれるのです。




■なぜ見積もりに差が出る?プロが見ている「費用を左右する3つのチェックポイント」

「うちと似たような築年数・広さの家なのに、見積もり金額が全然違う」。耐震補強では、そういったことが頻繁に起こります。それは、プロの診断士が、表面的な情報だけでは分からない、建物の”個性”を詳細に見抜いているからです。費用を大きく左右する、プロの3つのチェックポイントをご紹介します。



・1. 建物の構造(建て方)

日本の木造住宅には、柱と梁で骨組みを作る「在来軸組工法」や、壁パネルで建物を支える「ツーバイフォー工法」など、いくつかの種類があります。工法によって力の伝わり方や弱点となる箇所が異なるため、最適な補強方法も変わってきます。例えば、壁の少ない昔ながらの日本家屋と、壁で構成された現代的な家では、補強の考え方が根本的に異なります。



・2. 現在の劣化状況

長年の雨風や湿気は、建物を少しずつ蝕んでいきます。特に注意が必要なのが、湿気による「柱や土台の腐食」や「シロアリ被害」、そして「雨漏り」です。たとえ頑丈な補強を計画しても、それを支えるべき柱や土台が腐っていては全く意味がありません。その場合、耐震補強の前に、まず腐食部分の修繕やシロアリの駆除といった”下準備”が必要になり、その分の費用が加算されます。



・3. 家の形状と立地

1階より2階が突き出しているような複雑な形状の家は、地震の際に揺れが不規則になりやすいため、補強箇所が増える傾向があります。また、家の前にトラックが入れないような狭い道路に面している場合、資材の搬入が手作業になるなど、工事の手間が増えるため費用が上乗せされることもあります。


このように、耐震補強費用は画一的なものではなく、一棟一棟の家の状態に合わせた完全なオーダーメイド。だからこそ、現地調査なしでの安易な見積もりは信用できないのです。




■費用を抑えて大後悔…耐震リフォームで絶対避けたい3つの失敗パターン


「大切な家族を守るため」の耐震補強が、「とにかく安く済ませたい」という気持ちに負けてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。ここでは、費用をめぐる典型的な3つの失敗パターンをご紹介します。



・事例1:診断だけして補強せず→結局、地震で大きな被害


Aさんは補助金を利用して耐震診断を受け、「要補強」という結果が出ました。しかし、提示された工事費用を見て「今すぐでなくても大丈夫だろう」と補強工事を見送ってしまいました。その数年後、大きな地震が発生。家は倒壊こそ免れたものの、壁に亀裂が入るなどの大きな被害を受け、補強工事費よりもはるかに高額な修繕費が必要になってしまいました。診断は”健康診断”と同じです。悪い箇所が見つかったら、手遅れになる前に”治療”することが最も結果的に費用を抑えることに繋がります。



・事例2:補助金頼みで計画→申請が通らず予算オーバー


Bさんは自治体の補助金制度を頼りに、自己資金ギリギリで耐震補強を計画しました。しかし、申請のタイミングや条件が合わず、結局補助金を受け取ることができませんでした。工事の契約はすでに進めており、慌ててローンを組むことに。補助金は非常に有効な制度ですが、自治体ごとに予算の上限や申請期間、条件が異なります。補助金はあくまで「支援」と捉え、まずは自己資金でどこまで対応できるか、堅実な資金計画を立てることが不可欠です。



・事例3:格安業者に頼んだら”見せかけ”工事だった


「キャンペーン価格」を謳う格安業者に依頼したCさん。工事は短期間で終わり、一見きれいになったように見えました。しかし、後日、別の機会に床下を点検してもらったところ、重要な接合部に金物が取り付けられていなかったり、基礎のひび割れが表面的な補修しかされていなかったりと、”見せかけ”の工事だったことが発覚。耐震性能は全く向上しておらず、費用を完全に無駄にしてしまいました。価格の安さには、必ず理由があります。




■信頼できる業者は「不安」を解消してくれる。優良業者を見抜く3つの質問


「では、どうすれば信頼できる業者を見つけられるのか?」これは、耐震補強を考えるすべての人にとって最も重要な問いです。本当に優れた業者は、技術力があるだけでなく、あなたの「費用が分からない」という不安を、丁寧な説明によって解消してくれます。業者と話す機会があれば、ぜひ次の3つの質問をしてみてください。



・質問1:「私の家の強みと弱みを、具体的に説明してください」


信頼できる業者は、耐震診断の結果をただ示すだけでなく、「この家は壁のバランスが良いので、この部分の強度は保たれています」「しかし、基礎のこの部分にひび割れがあるので、ここが弱点です」というように、あなたの家の”個性”を素人にも分かりやすく説明してくれます。診断の質と説明能力の高さが伺えます。



・質問2:「これまでの施工事例を、写真などで見せてもらえますか?」


百の言葉よりも、一つの実績です。過去にどのような家の、どのような補強工事を手掛けてきたか、具体的な施工事例を見せてくれる業者は、自社の仕事に誇りと自信を持っている証拠です。特に、公共工事などを手掛けている実績があれば、その技術力と信頼性は非常に高いと言えるでしょう。



・質問3:「工事後の保証やアフターフォローはどうなっていますか?」


「工事が終われば関係も終わり」ではありません。工事後の定期点検や、万が一の不具合に迅速に対応してくれる体制があるかどうかは、その業者が自社の工事に長期的な責任を持つ覚悟があるかを示す重要な指標です。


ちなみに、耐震補強は壁や床、天井などを一度剥がして行う大掛かりな工事です。せっかくのこの機会に、断熱材を追加して冬暖かく夏涼しい家にしたり、間取りを変更してより暮らしやすい空間にしたりと、他のリフォームを同時に行うと非常に効率的です。信頼できる業者なら、耐震性向上だけでなく、あなたの暮らし全体の質を高める総合的な提案をしてくれるはずです。

どのようなリフォームが最適か、一度専門家の意見を聞いてみるのも良いでしょう。

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■まとめ:あなたの家の”本当の費用”を知る、最初の一歩


耐震補強の費用について解説してきましたが、最もお伝えしたい要点は「あなたの家の本当の費用は、専門家による家の”健康診断”を経て初めて分かる」ということです。


インターネットで相場を調べても、それはあくまで平均値であり、あなたの家の費用ではありません。費用の不安の正体は、この「分からない」という状態そのものです。そして、その不安を解消する唯一の方法は、信頼できるプロに相談し、我が家の今の状態を正しく知ることから始まります。


創業から40年以上、私たちは公共事業で培った確かな技術力で、地域の方々の大切な住まいを守るお手伝いをしてきました。私たちは、いきなり高額な工事を勧めるようなことは決していたしません。まずは、あなたの家がどのような状態で、どのような課題を抱えているのかを正確に把握するための「耐震診断」から始めることをお勧めします。


専門家と一緒に我が家の現状を知ること。それが、漠然とした不安を解消し、大切な家族を守るための、最も確実で賢明な第一歩なのです。

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