「せっかくなら、おしゃれな背面収納にしたい」――その気持ちは多くの人に共通するものです。キッチンは毎日使う場所だからこそ、空間全体が整っていると気分も上がります。しかし、見た目の美しさを追求するあまり、使い勝手や機能性を犠牲にしてしまい、後悔につながるケースも少なくありません。
たとえば、雑誌やSNSで見かける「生活感のない収納」はとても魅力的ですが、それを自宅にそのまま取り入れると「扉を開けるたびに面倒」「モノの出し入れに時間がかかる」と感じてしまうことがあります。美しさを保とうとするあまり、使いたいときに気軽に手が伸びない――そんな不便さが、日々の中でじわじわとストレスになっていきます。
また、「おしゃれな棚を買ったけれど、壁や床と合わなくて浮いてしまった」という声もあります。収納は単体ではなく、壁の色、床材、照明とのバランスも含めて検討しないと、空間全体の調和を損ねてしまいます。
おしゃれさを追い求めること自体は悪くありません。ただし、そのデザインが自分の生活スタイルに本当に合っているか、毎日使う中でストレスにならないかを丁寧に考えることが、後悔のない選択につながります。
統一感のある空間づくりには“収納の設計”が鍵
キッチンをおしゃれに見せたいとき、多くの人が家具のデザインやカラーに目を向けます。しかし、空間全体を見たときに「なんとなく雑多に見える」「落ち着かない」と感じるとしたら、それは“統一感の不足”が原因かもしれません。そしてその統一感を左右する大きな要素が、実は収納の設計にあります。
収納の高さ・奥行き・扉の素材・取っ手の形状――こうした一つひとつの要素は、空間に与える印象を大きく左右します。たとえば、天井までぴったり収まった収納は空間に広がりを感じさせ、見た目にも整った印象を与えます。一方、既製品をそのまま設置した場合、隙間や段差ができてしまい、「置いただけ感」が出てしまうことがあります。
さらに、収納の色選びも重要です。壁や床の色と馴染ませることで、収納が“溶け込む”ように感じられ、空間全体がすっきりまとまって見えます。逆に、周囲の素材と合わない色味を選んでしまうと、収納が浮いて見え、せっかくのおしゃれ感が損なわれてしまいます。
おしゃれなキッチンを実現するためには、収納そのもののデザイン性だけでなく、「どんな空間に、どう収まるか」という視点が欠かせません。空間全体を設計するという意識で収納を考えることで、見た目にも暮らしやすさにも納得のいくキッチンが生まれます。
毎日使う場所だからこそ、動線と使いやすさが重要
「おしゃれ」な収納を選んだはずなのに、使ってみたら不便だった――そんな声の多くは、収納を“使う動き”まで想定せずに決めてしまった結果です。見た目と使いやすさの両立には、「どう動いて、どう使うか」を想像することが欠かせません。
たとえば、引き出しの高さが中途半端だと、しゃがんだり背伸びをしなければならず、毎日の作業で疲れを感じてしまいます。また、食器棚の扉が手前に大きく開くタイプだと、キッチン内の他の動きと干渉してしまい、スムーズな調理の流れを妨げることもあります。
さらに注意したいのが、「収納の中身の配置」です。よく使う調味料やカトラリーが取り出しにくい位置にあると、使うたびに手間を感じるようになります。逆に、取り出しやすさを考慮して引き出しの高さや仕切りを調整すれば、ちょっとしたストレスがなくなり、家事全体の効率も上がります。
見た目の美しさだけで収納を決めてしまうと、こうした日常の“小さな不便”に気づいたとき、もう取り返しがつかなくなっていることもあります。だからこそ、収納は「しまうための箱」ではなく、「動きの中で使う道具」として考えることが大切です。
おしゃれを保ちながら、使いやすさも妥協しない。そのバランスが、長く愛せるキッチンをつくる鍵になります。
見た目も、使い勝手も妥協しない空間の作り方
おしゃれなキッチン収納は、見た目の美しさだけでなく、実際に使う中での快適さも備えてこそ価値があります。両立が難しそうに思えるかもしれませんが、実際の施工事例を見ていくと、小さな工夫の積み重ねでそのバランスを実現している例が数多く存在します。
たとえば、収納内部にコンセントを設けて、炊飯器や電気ケトルをスライド棚の中で使えるようにした事例。外からは見えず生活感を隠しつつ、日常の使いやすさにも配慮されています。また、背面収納の一部をオープンラックにすることで、よく使う器や道具を“見せる収納”として演出しつつ、取り出しやすさも確保している例もあります。
素材選びにおいては、キッチン本体と背面収納の面材を揃え、空間全体に統一感をもたせる工夫が見られます。色調を整えることで、限られたスペースでも広がりを感じさせる効果があり、無理に装飾を加えずとも十分におしゃれな印象を与えられます。
こうした事例に共通しているのは、「暮らしに合わせて設計されている」という点です。既製品をそのまま置くだけでは得られない、“その家のための工夫”が細部に宿っています。収納は、空間の一部であると同時に、暮らしを支える機能でもある。そうした視点で計画された収納こそが、本当に長く満足できる“おしゃれ”といえるのではないでしょうか。
実用性とデザイン性の両立を目指す方へ、収納設計のヒントはこちら:
https://www.kaneko-knst.com/aboutus
置くだけでなく、“暮らしに組み込む”収納設計
キッチン収納を考えるとき、まず「どんな家具を置こうか」という発想から始める方は多いと思います。しかし、見た目も使いやすさも大切にしたいなら、視点を少し変えて「この空間に、どう組み込むか」と考えてみることをおすすめします。
たとえば、冷蔵庫や食器棚との高さの揃え方ひとつで、空間の印象は大きく変わります。段差のある家具を並べると、視線が分断されて雑多に見えがちですが、高さを揃えることで水平ラインが生まれ、整った印象になります。さらに、奥行きを調整すれば、通路が広く感じられ、作業効率にもつながります。
また、「置く収納」では難しい壁面とのすき間や床との接地面も、造作収納であれば隙間なくぴったり収めることができます。これにより、見た目の統一感だけでなく、掃除のしやすさやホコリの溜まりにくさといった実用面でも大きな違いが生まれます。
こうした工夫は、単に家具を置くだけでは実現できません。空間全体を観察し、動線や視線、生活動作に寄り添った設計があってこそ可能になります。収納を家具ではなく“空間の一部”としてとらえることで、暮らしそのものがより快適に、そして美しく変化していきます。
おしゃれな収納を目指すなら、まずは「この場所で、どう暮らしたいか」を考えることから始めてみてください。その答えが、理想の収納設計への第一歩になります。
デザインも使い勝手も大事にしたい方へ
おしゃれな収納は、見た目の美しさと日々の使いやすさのバランスが取れてこそ、本当に価値あるものになります。ただ華やかなデザインに惹かれるだけではなく、「この収納で、自分の暮らしがどう変わるか」を想像することが、後悔のない選択につながります。
理想と現実の折り合いをつけるのは難しいと思うかもしれませんが、収納の設計にはその両立を実現する余地が十分にあります。素材の選び方、サイズの調整、配置の工夫――その一つひとつが、自分らしい空間を形づくっていく手がかりになります。
収納は、家具のように単体で選ぶものではなく、暮らし全体を見渡して計画するものです。そう考えると、見た目にこだわることも、機能にこだわることも、どちらも自然な姿勢といえるでしょう。
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